2016年10月09日

日本海 その深層で起こっていること

日本海 その深層で起こっていること
蒲生俊敬   講談社   2016.2
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 日本海の成り立ちや、小さいながら独立して生きている理由などの解説である。
 深海の生物などを考えていたが、それはなかった。
 日本海の広さは、世界の海域の広さの0.3%でしかない。
 対馬海峡・津軽海峡・宗谷海峡・間宮海峡という浅くて狭い海峡で外海とつながっている。そのため海水の出入りが少なく、干満の差がわずかである。水深は最大3800mとかなり深い。
 このような地形では、深層は死の海となる。その例が黒海だ。
 ところが日本海は、比較的塩分濃度の濃い対馬暖流が北上して、酸素をたっぷり含んだ海水が北で冷やされ、重くなって沈み込む。そのため循環が生じ下層では掻き回され、100〜200年で循環は1周する(熱塩循環)。そのため深層でも酸素を含んだ生きた海水である。大洋では、その10倍2000年もかけて循環が1周するといわれている。黒海はこの循環が生じていないため、低層は死の海になる。
 こんなことから、日本海は豊かな海になり、季節風もあって対馬海流の蒸気が雪(雨ではなく)になり、国土も豊かになった。
 日本海はずっとそうだったわけではない。8000年前は死の海だったという。
 日本列島と大陸との微妙な距離、日本海の微妙な形が成立して豊かさをもたらすようになった。そのため、気候変動の影響を受けやすい海でもある。
 そんなことをいろいろな資料を用いて説明し、日本の歴史も考察する。
 そして今、温暖化によって、北海での冷え込みが弱まり、沈み込みが少なくなっている。循環が弱まり、深層では酸素が少なくなっている。同時に雪不足になり、日本の豊かさを損ねることになる。
 これが世界の海に対する警告となっているのだ。
posted by たくせん(謫仙) at 11:54| Comment(4) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
一度ドイツに行ったことがあり、その時にアフリカのアルジェは東京より北にあることを知りました。ベルリンは間宮海峡のやや北ときいて驚いたことがあります。は
「てふてふが一匹 韃靼海峡を渡って行った」は最果ての場所のように思っていたのですが・・・
ヨーロッパは地中海が温暖な気候を生みだしていて。日本海もこうなのでしょうね。
地球温暖化は原発よりもはるかに、比べ物に恐ろしいのかもしれません。
原発もない方がいいのですが、それ以上に恐ろして温暖化に日本人は無関心すぎるのかもしれませんね。
Posted by オコジョ at 2016年10月09日 18:56
オコジョさん
何十年か前にヨーロッパの人が、日本はアフリカなみの暑い国だと誤解して、冬に夏の服装できてふるえたということがありました。緯度だけ見ると無理もない。
ヨーロッパは、メキシコ湾流に洗われてかなり北まで暖かいとか。
日本海の存在は地勢的にも歴史的にも、日本に様々な影響を与えていますね。
雪は自然を豊かにし、農業を盛んにする。大陸の文明を適度に取り入れられる距離ながら、適度の遠さが日本文化をはぐくむ。日本文明という人もいるほど。
それも温暖化によって、かなりの影響がありそうです。今でも水不足で農産物の形で輸入しているのですから。
原発の場合直接に今被害が出ている。温暖化は将来間接的な巨大な被害になりそう。
人類の叡智で防げるとよいのですけど……
Posted by 謫仙 at 2016年10月10日 07:32
便利な生活になって、しかしその付けで二酸化炭素の排出により温暖化は深刻な問題ですね。

海の底でも色々な不具合が生じているとは考えもしませんでしたけれど、そうですよね、年々海水温が上昇して気候が影響を受けているわけですしね。

かと言って昔の生活に戻せるわけもなく・・・ですが。

我が家の地球にやさしい暮らし方として河川を汚さない微生物を活性化させるために合成洗剤は使わない界面活性剤を出来る限り少ない石鹸生活を二十数年続けていますけれど微々たるもんでしょうけれども。。
Posted by 千春 at 2016年10月14日 09:50
千春さん
 深海に酸素を送るシステム、このように説明されると、なるほどと思います。判ったのは最近のことです。温暖化の害はこんな所にも及んでいました。
 戦後、東京湾で海の土を掘ったことがありました。それは広く浅くでしたが、現在、そこの部分は循環が起こらず、ほんの数メートルの深さで、死の海になっています。微妙なものですね。
 いろいろ問題がありますが、人が生きている生活しているのが、最大の問題とも言えるので、できる範囲で努力するしかないでしょうね。
Posted by 謫仙 at 2016年10月15日 07:36
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