ポール・オフィット 地人書館 2015.9
代替医療とは、「通常医療の代わりに用いられる医療」を指す。今のところ、通常医療に取って代わるような代替医療は存在しないという。
代替医療でも効果がはっきり証明できれば、つまり科学的根拠があれば、それは通常医療に組み込まれよう。代替医療ではなくなる。
代替医療は効果があることを証明できないので、医療といっていいのか。
元気なときに、正しい知識を身に付けて、わが身を守らなければならない。
この本で書かれた悲劇は、ほとんどがアメリカの話だが、今後は日本でも同じような悲劇が起こりそうなのだ。
治るはずの通常医療を拒否し、代替医療に頼る。その様子を丁寧に解説している。
すべてが詐欺師ばかりではない。間違った信念で「病が治る」と思い込んでいる人もいる。その「間違った」が通る歴史的いきさつや、社会状況の詳しい説明がある。
アメリカのサプリメント業界の暴走ぶりが、なんと法的なお墨付きの下で行われているのだ。
そのような、インチキ代替医療に騙されてしまった人たちへの、思いやりが読み取れる。
代替医療だって、プラセボ効果で効くことも多い。だから代替医療とインチキ医療が見分けにくいのだ。
一例としてビタミン大量投与があげられている。どんな薬でも摂りすぎはよくないはず。
鍼に対しても否定的だ。鍼は体を熟知していないと効果は薄い。しかし、それなりの効果があるといわれている。科学的に証明できないのが問題か。
最後に…、副題の「魔法を信じるかい?」は原文に有り、代替医療のことをいっているようだが、代替医療は魔法ではない。騙された人たちも魔法だとは思っていないだろう。魔法は信じていないはず。
わたしは「魔法」とは祈祷医のようなものと思って読み始めた。たとえば、牧師にお祈りしてもらうとか。偶像に祈るとか。未開地域における祈祷師とか。
全体的には読みにくい。言葉は易しいが、訳がこなれていないので、止まってしまう。
「ひとりの男が…」とあると、「あれ、これはひとりでなくても、女でも該当すると思うが…、」と考えてしまうとか。
延々と寄付者の名前と金額が並べられたりするが、「その名前や金額にどんな意味があるのか」とか。