松本健一 岩波書店 2012.8 (2003版の改訂版)
世界を、砂の文明・石の文明・泥の文明と分類し、その特徴をもって、古今の世界の状況を判りやすく説明している。
特に今の中東情勢を、砂の文明と石の文明の衝突として解釈するあたり判りやすい。
ただし、何度か「○○であるとすれば、……はこうなる」と説明しているように、これは仮説であって、できれば、逆に「○○でないとすれば、……はこうなる」という説明も欲しいところ。
まるで誰かから「○○であるとすれば、」という宿題に答えたようだ。
「自分は信じていないが、○○であるとすれば、…はこうなる」と言っているみたいだ。
自分の考えなので、「次のように考えた」でいいはず。
石の文明とは薄い土地の下が石の地域で、中部欧州などを指す。ここは草地となり、農業に適さず、産業は牧畜であり、生産を拡大するには、外に土地を求めることになる。そのために西洋文明が起こった。そして世界を侵略する、つまり世界のあちこちを植民地化した。
砂の文明とは、砂漠地帯を指す。土地は不毛でそこでは永住できない。砂漠周辺の人を対象とする商業活動を行う。そのため、ネットワークを利用し交易する。国境という概念がない。
泥の文明とは、アジアモンスーン地帯など、豊かな土地のこと。ここでは定住して農業を行う。生産をあげるには、土地や品種を改良し質を高める。土地を広げようとすると、となりの土地とぶつかることになるからだ。
こう考えると、石の文明が拡張して他地域を占領し独占し、それと国境を無視する砂の文明とが衝突することになるのが理解できる。
また砂の文明では、不毛の太地で孤独に生きる精神的な支えとして、絶対神である一神教を信じることなる。
泥の文明地帯では生命が満ちあふれ、そのため多神教となる。自然の山や川が地域の境となり、お互いに境界を守る。インド・華南・韓国・日本など。
ここで注意すべきは、北朝鮮・華北などは泥の文明地帯ではない。
なおインドの独立に当たって、ガンジーは「非暴力的抵抗」で成功した。これは泥の文明の考え方という。
世界を代表するような文明の仮説であって、例外(たとえばギリシャは石の文明)も多いが、論旨が明快で、文明などに対する一つの見方として、一考の価値がある。