2017年01月23日

神の守人

2016.12.20 記

神の守人
上橋菜穂子   新潮社   2009.8

ロタ王国では富の南北問題があった。豊かな南と貧しい北と。
それは民族問題でもあった。
過去に王国を築きながら、今では抑圧される北の貧しいタルの民には、過去の出来事に対する、ロタ王国建国の伝説とは異なる伝説があった。
そして、伝説の恐ろしき神<タルハマヤ>を呼び寄せる力を持つタルの少女アスラが現れた。巨大な力ゆえに大事件を起こし、追われる身となる。
 その恐ろしき神<タルハマヤ>の力を使ってよいものか、その選択をする少女アスラの背負うものが大きすぎるのだ。

   いずれ災いの種になるから、殺したほうがいい。

 一見まともな主張のようだが、民族差別はそんな主張から生まれる。可能性があるからと殺して良いのか。
 立場の違いによって、解釈は異なる。自らを守るすべを持たない少女が危険になったとき、バルサは少女の背景を知らずに、少女を守るという選択をする。
 だんだん背景が判ってきたが、少女を守るという選択は変わらない。それは少女の恐ろしき神<タルハマヤ>に対する解釈にも影響を与えている。

 南北・民族・宗教・教育などの問題、かなり重いテーマの本だった。この本が書かれた頃、イラク問題があったという。
posted by たくせん(謫仙) at 18:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
妻が「精霊の守り人」が好きなので、なんとなく見ています。
背景には深いものがあるのですね。
民族対決は日本では余り身近ではないのですが、世界的には根深いものがありますね。
アメリカもどうなるのかと・・・
「精霊の守り人」、小説とドラマでは違うのでしょうが、妻とみていくことにします。
Posted by オコジョ at 2017年01月24日 13:00
オコジョさん
ドラマ「精霊の守り人」シリーズは多少変更があるとはいえ、原作に近いですね。
ただ地図が大きく変わっていたのが目につきました。
サンガル王国が列島の国になっていますが、原作では、列島を含む半島の国で、首都は半島部にありました。この変更が気になっています。それに沿って他の内容も的確に変更しているのかどうか。
民族差別はなかなか消すことはむずかしい。まして国内の少数他民族はなおさらです。しかも他民族がいないと、弱い他氏族を差別する。差別する人たちはそれを当然とする。
それを消す努力をしているか。問われますね。
Posted by 謫仙 at 2017年01月24日 18:59
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