2007年06月15日

ガイア伝説

     半村良   主婦の友社   1999.3
 写真にある文字は、これでも漢字である。 ガイ・アと読む。
 乂は出るが「ア」は出ない文字なので、仮にカタカナにしておく。
乂 ガイ 草を刈る・治める・賢人・戒める。
   ア ふたまた・草木の枝が分かれたさま・あげまき・子供や少女の角髪。

        gaia.jpg       

 半村良を代表する伝説シリーズの掉尾を飾る。それだけに結論部分は退屈する人もいるだろう。いままでの伝説シリーズの結論でもあるので、かなり説明が続くのだ。
 内容はあのOSの話を思わせる。

日本でトロンというOSを作った。無料で配布したのだが、アメリカから貿易障害という横やりが入った。そこで断念すると、アメリカでは同じようなOSを作り、独占的に有料で配布した。
もっと凄いのは、
「日本人が日本語を話すのは貿易障害だ」
「WORDが独占できないのは貿易障害だ、日本のワープロソフトを禁止せよ」
 もっと優れたソフトがある。あんな使いにくいソフトを使っている人が多いのは、抱き合わせ販売によって、初めからパソコンに組み込まれているからだ。そもそも法令によって独占させることこそ貿易障害である。


 さて、本題に戻る。
 現在の人々の生活は膨大なエネルギーを消費して、地球環境を破壊する。そのエネルギーは電力の形をとることが多い。
 人は電気を稲妻か鉄の形でしか見ることができない。だが電気をはっきりと見ている生物がいるかも知れない。
 雑誌の編集をしている高条は、生物が電気を発生することに興味を抱く。
 マデリンという製薬会社が、かなり前に生物電池の研究をしていたことがある。だが特許は取り損ねた。
 高条は思う。もし、バイオ電池が完成していたなら、鋼鉄業界はパニックに陥るのではないか。
 世界中に張り巡らされた電線、それを支える鉄塔。それらが不要になるのだ。
注 この本では電線を鉄といっているが実際は銅である。著者の錯覚か。重要な間違いだが、それでもこの物語は成立する。

 そして、マデリン・カントリークラブに取材する。
そこの旧コースはゴルフ場として使用していない。だが、そこが、マデリンの生物電池の研究所であった。
 以前、マデリンが生物電池を作ったとき、アメリカ政府から猛烈な圧力がかかり断念させられたのだ。アメリカ鉄鋼業界の保護のためである。
 そのためここで秘密裏に研究を進めていた。
 アマゾンで発見した藻が、きわめて優れた電池となる。もはや乗り物は石油を必要としなくなる。そこで使われているカートはすでにバイオ電池によって動いていた。
 だが、それだけではなかった。
 そこにいる人たちは「感応力」があった。
 たとえばある種の植物の実はグライダーのように飛ぶ。その翼はいろいろな形をしている。そして翌年は遠くへ飛んだ種子の形に似た種子を多く作る。それを繰り返すのだが、問題は、その木はどうして遠くへ飛んだ種子の翼の形を知ることができるのか。
昆虫に似せた形で咲く蘭の花がある。どうしてその蘭は昆虫の形や性質を知ったのか。
幸島の一匹の子猿が芋を洗うことを覚えると、まもなく、全世界の猿が洗い始める。どうして伝わったのか。
 そう、高条もその感応力があったのだ。だから、自分では取材のために何とか来ることができたと思っていたが、呼ばれたのだった。
 そこにいる人ばかりではない。アメリカを初めとする暴力から身を守るため配置された猛犬たち。見張る鳩たち。すべてが感応で繋がっていた。そして、そこで小世界を形作っていた。金儲けには興味がない。
 どうして、そこまで用心するのか。前にマデリンで、大衆保険薬を作ったことがある。爆発的に売れた。だが、アメリカから薬効に疑問があるとクレームがついた。アメリカの製薬会社が同じものを新しく作り、それを日本に売り込むためだった。
 高条の妻と娘も感応力があった。そのため息子はおいて、三人でカントリークラブに住むことになる。植物と会話する妻、犬たちと会話する娘。
 子供が学校に行けば、授業が始まると同時にその先生のすべての知識を吸収できる。その知識は感応力のある全員に同時に伝わる。こうして群体のようになって進化していくため、集まった人たちはふたたび世間に散っていった。人類の攻撃から身を守るためにも。
posted by たくせん(謫仙) at 18:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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