ニール・F・カミンズ 東京書籍 1999.7
SF的科学書とでもいうのか。イフ・ワールドの世界である。
もし月がなかったら、地球はどうなっていただろうか、という科学的考察をしている。
この内容を用いて小説にすればSFになる。小松左京の小説は科学的説明が、このレベルになっていたと思う。
普通の小説はここまで厳密ではない。
1章 もしも月がなかったら?
2章 もしも月が地球にもっと近かったら?
3章 もしも地球の質量がもっと小さかったら?
4章 もしも地軸が天王星のように傾いていたら?
5章 もしも太陽の質量がもっと大きかったら?
6章 もしも地球の近くで恒星が爆発したら?
7章 もしも恒星が太陽系のそばを通過したら?
8章 もしもブラックホールが地球を通り抜けたら?
9章 もしも可視光線以外の電磁波が見えたら?
10章 もしもオゾン層が破壊されたら?
たとえば月がなければ、1日は8時間になっている。潮汐はほとんど無い。風が強く、会話も聴力より視力が用いられる。
そうなると…と、いろいろと影響を及ぼす。あることが変わると、それが原因となって、思いもよらない結果となるのだ。生物の進化の様子もだいぶ異なり、もし人が発生したとしても、人の生き方は現代とは全く違った生き方となる。
現在の地球が、奇跡のような偶然のバランスを保っていることを知ることになる。
若い頃はこんな話に夢中になったものだが、今では少し敬遠気味。もし人が百メートルを9秒で走れたら、8秒で走れたら、7秒で走れたらと、いくらでも仮定は設定できる。
おもしろい話だが切りがない。だから、それらが小説と結びついて、おもしろい小説になった時は読む。今回は小説ではないが一応全部読んだ。最後の、
10章 もしもオゾン層が破壊されたら?
また、この本にはないが、地球の温度が2度高くなると?
など、現実的な問題となってマスコミを賑わしている。
この「もしも……だったら」という問いは、あまり意識しないが、常に考えていることでもある。
もしも大金持ちになったら、もしも失職したら、もしも断水したら、もしも停電になったら、もしも電車が止まったら、もしも……、というように。