週刊碁には新初段シリーズという企画がある。新初段がコミなしの黒番で先輩の胸を借りる。
2017年6月19日発行の「週刊碁」の新初段シリーズの記事の中で、「先」の手合いのハンディはどのくらいのものか? つまりコミなしの場合のハンディについて、言及していた。
大手合の通算成績では、黒28945勝21729敗で、黒の勝率5割7分1厘だという。
大手合は九段は出場しない特殊棋戦とはいえ、意外な気がした。
その話の中で、もしトップ同士なら黒の勝率はと訊かれた中野九段は「9割」という返事をした。そして0.571という数字には驚いたものの、「実は僕も白で5割以上勝っていた」という。
コミなしで黒の勝率57%。この数字もトップレベル同士では当然変わる。おそらく中野九段の「9割」ではないか。しかし、総互先になった今では、検証の機会はなくなった。
本妙寺−本因坊家の墓 でも安倍吉輝九段が秀和の墓の前で言った。
「コミのない時代に、(井上)幻庵因碩は白番で本因坊家の若き秀才を抑えようとした。無理ですよ」
十九歳の秀和は、跡目とはいえ、すでに師を凌いでいたという。低段ならともかく、半目を争うトップレベルである。コミなし白番で勝つことは難しい。(秀和の黒番四目勝ち)
これが現在の棋士の感覚である。
今では、一般の棋戦では新初段も互先で打ち、それなりの成績を上げている。新人のレベルは昔と比べて、かなり上がっているという。
新初段シリーズは新初段のコミなしの黒番である。昔の2段差扱いということになる(下記参照)。
現在のコミは六目半、以前は五目半、コミ出しを始めた当時は四目半だった。四目半では黒有利といわれていた。当時の棋士の多くは黒を持ちたがった(黒番で対局)。
それで五目半にし、それでも黒有利といわれていた(数字上では51%)。六目半になって、有利不利の声は少なくなった。むしろ白が有利の声が大きいか。
2003年に廃止した、日本棋院での大手合の手合割り。
段差 手合割り
0段差 互先
2段差 先(1子に相当)
5段差 2子
8段差 3子
3段差が1子であった。今では素人目で見てもこんなに差はない。また段位が実力を現しているわけではなく、過去の実績に対する名誉のような意味合いが強い。