2007年06月19日

シルクロードの鬼神

  エリオット・パティスン    早川書房
 中国西域を舞台にした、ミステリーである。
 書かれた内容は鋭く、中国政府を悪鬼の如く書くので、アメリカで人気が高いのも頷ける。
 ただし、翻訳が悪いのか、原文がそうなのか、実に読みにくい。
 主人公の単がなぜそこにいるのか、それさえなかなか理解できなかった。偶然カバーに書いてあった文が目には入り、理由が判った。その時は上下巻のうち、上巻の半分以上を過ぎたころである。
上巻のカバーに、
「……彼は高僧から依頼を受けた。……北に行って調査してほしいというのだ。……」
 だが、本文中このようなシーンはなかったように思う。
 特に場面が思い浮かばず、現在どういう所で誰がどうしているのか、かなり判りにくい。
 ただ一行の空白だけでも、場面の転換がかなり判るはずなのに、文の途中で場面を変えると、見落としがちである。
 その点、わたしの好きな作家は場面の転換が鮮やかである。

 落語の桂文楽(八代目)を思い出した。
「金っ!、出ていけーっ!」
 ちょっと間をおいて小さい声で、
「金が帰ったか、……」
 これだけで場面がガラッと変わる。
 まさに名人芸であった。

 これを、間をおかずに一本調子で語るのが、この本である。
 本来なら投げ出すところだが、西域に対し蘊蓄を傾けているので、最後まで読むことになった。
 また、三十年ほど前に読んだ、ダライ・ラマの話を思い出した。ダライ・ラマが入滅したとき、次のダライ・ラマの探し方を説明してあった。
 この探し方が、「シルクロードの鬼神」の謎を解く重要な鍵だったのだ。
 読み終わってから、下巻のカバーの文を読んだ。
「少年たちが次々と殺されていったのだ。子供を食う鬼神の仕業と囁かれる中、……」
 このような噂が、本文中であちこちで囁かれていた記憶はない。
 次から次に子供が殺された。と表現している。何人かと思えば二人である。
 二人で次から次にと表現するものだろうか。どこかで見落としていたのかも知れないが、疑問のままである。
posted by たくせん(謫仙) at 07:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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