
「我輩は猫である」を書くことで、現代的な文体を完成し、後世の手本となった夏目漱石の、猫を書くまでの悩みを戯画的に書いた小説である。
ある人が古い手紙を持ち込んだ。なんとか読んでみると差出人は夏目金之助(漱石)らしい。
受取人は誰か。若い女性らしい。この「手紙」の謎に迫るうちに、当時の漱石の心情が理解でき、作家「夏目漱石」の偉業が頭に入ってくる。
明治時代は文語の時代であった。そこに言文一致体の文を試作する人がいたが、どうもしっくりしない。それを漱石が、若い女性の意見を参考に「我輩は猫である」で完成させた。
読んでいるときは、とても小説とは思えないほど。その若い女性は自殺した。その原因は漱石か。
そのミステリー小説といえよう。
漱石の意外な上機嫌さ。お金に対して細かい人という一面もあり、その理由も納得できる。
どこまで本当なのか創作なのか気になってくる。最初の手紙にしても、読んでいるときは、その手紙があって、いろいろ考えたように思えたが、どうやら手紙も創作らしい。
一気に読んでしまった。