梶尾真治 光文社 2008.3
「アイスマン」とは月下氷人のこと、縁結びの神、転じて仲人に使われる。主人公の愛称である。
祖母からの形見分けで貰い受けた文箱があった。その中には《傀儡秘儀 清祓へ》の古文書が入っていた。その他、おまじないの小道具も入っている。そのおまじないは男女の仲を取り持つ。
主人公がそのおまじないをすると、男女が相思相愛の関係になるが、思わぬ事態となる。
それから15年。30歳を過ぎた。
仕事と恋と友情の悩みで揺れる3人の女性。そして主人公には、病弱な母親の世話の悩み。さらにあのおまじないの後遺症の問題があった。三回目には死を迎える可能性が高いのに、親友におまじないを依頼される。
悩みは誰もが抱えるような悩みだ。しかし、主人公は人情味はあるが、なかなか思い切れない性格。それだけの事情があれば主人公でも断れそうなもの。でも断り切れず心が揺れる。それを陰から見守る母親と大叔母がいる。
ラストは意外性があり、著者らしい、切なさほろ苦さのあるハッピーエンド。
この本を読む前に、翻訳物の超長編を読もうとした。ところが100ページも読むと読むのが嫌になってきてやめた。やたらに長いのに意味不明。このエピソードは伏線なのか、そんなにいろいろと伏線を張られても覚えられない。必要なのか。そんな疑問が続くのだ。
その点この本は無駄がなく、必要な話ばかり。だから読みやすい。