7月22日訂正
世界の囲碁ルール
王銘琬 日本棋院 2019.4

(本の紹介で、書評ではありません。感想も入れてありますが)
この本はわたしの予想とはかなり違った。
世界の囲碁ルールではなく、「囲碁ルールの世界」というべきだろう。
中心となるのは、いわゆる日本ルールと中国ルールの話である。
日本ルールといえば地を数える、中国ルールといえば石を数える、といわれているが、それは誤解で、両方とも地を数えている。その数え方が違うのだ。
日本ルールでは最後にアゲハマを盤上に戻す。結果、盤上の石数は同数か黒が1目多い。判っているのでいちいち数える必要はなく、地だけ数えればよい。
中国ルールではアゲハマのかわりに、石全体を数えて地の差を数える。
昔、切賃というルールがあった。
最後に生きるための2眼(2目)を残さねばならない。石群ごとに2目必要になる。
最後まで打って石を数えればよいが、それは面倒なので地を数え、そこから生きるための2目を引く。それを切賃という。
つまり石数を数える便宜的な方法である。この切賃のあるルールが、石を数えるルールだ。日中ともに古い碁にある。
ところが現在は、中国ルールといっても、生きるための2眼まで数える。つまり、地を数えるに等しい。
(これらの話は、中国ルール側で逆に考えても、成り立つように思える。「日本ルールも石を数える」に等しい)
王銘琬先生は台湾で育った。台湾では碁会所によって、日本ルールだったり中国ルールだったりする。それどころか人にもよる。いちいち、対局前に確認しなければならない。それはアゲハマを戻すか確保するかの差になる。だから環境がよければ日本ルール、悪ければ中国ルールだ。
環境が悪いとは、たとえば、まわりで遊んでいる子供がアゲハマをひっくり返す。あるいは遊びのために持って行ってしまう。しかも賭碁が多い。こんな環境では中国ルールだ。
ところが日本では賭碁は滅多になく、碁の環境が整い楽しみで打っている。楽しんで打つ環境では、日本ルールが優れている。
ここで、中国ルールの場合、最後に黒が打った場合は黒は1目減らす。これを「収後」といい、結果は日本ルールと同じになる。全く問題はない。
現代の中国ルールは「収後」を廃止した。そのため、日本ルールとは差が生じるようになった。
これら以外の差は、混乱を防ぐための便宜的なルールだ。
例えばセキの扱いとか、スミの曲がり四目とか。
昔は、「取らず三目」というルールがあった。日本ルールの不合理さの象徴といわれている。しかし、かなり前に改訂されて現在は存在しない。このことは日本でもあまり知られていない。日本国内に限らず、世界に向け強く発信すべきだ。
滅多に起こらない特殊ケースは、ルールで説明できなくてもよいではないか。
(重要な対局のためには、ルール化してほしい。できれば世界共通に。わたしなどは問題の意味さえ理解出来なくて、一度も体験したことがないので、ルールで説明できなくてもよいにしても)
今、囲碁AIが碁界を席巻しているが、これは中国ルールで開発されている。囲碁AIには日本ルールは理解が難しいらしい。
日本ルールは相互の合意によって終局とする。合意を取ることがAIは苦手なのだ。
中国ルールは最後まで打つことを前提にしている。そのため、終局の合意を求めてパスすると、中国ルール育ちのソフトは、パスできず自滅する話は興味深かった。
日本ルールで開発すれば問題ないと思える。
(王銘琬先生は、情緒的に考える傾向もあるようだが、アマには判りやすい説明だ)
連続3回パスで終局とするのが論理的。劫立てでパスすることがあるので、連続2回では問題が起こる可能性があるのだ。
(日本棋院「幽玄の間」では、連続2回で終局できるようになっている。問題が起こったという話は聞かないにしても)
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わたしは今までいろいろと、碁のルールの疑問を取り上げてきた。それらの集約的なルールの考え方の本であった。
中国の碁のルールの変遷 http://takusen2.seesaa.net/article/199633254.html
中国の碁のルールの変遷 追記 http://takusen2.seesaa.net/article/377295340.html
還珠格格の碁 http://takusen2.seesaa.net/article/196216473.html
還珠姫の碁 http://takusen2.seesaa.net/article/198636016.html
時間切れ負け制の終局問題 http://takusen2.seesaa.net/article/178300376.html
アジア大会で時間切れを狙うプロ棋士がいた
http://takusen2.seesaa.net/article/170248272.html
終局の仕方 http://takusen2.seesaa.net/article/132071655.html
中国ルール http://takusen2.seesaa.net/article/132154166.html