2007年07月08日

スシとニンジャ

   清水義範  講談社文庫(1995.10)  1992.8
 スシが食べたいニンジャに会いたいと心の底から願って日本に来た、純朴なアメリカ青年の日本旅行。
        sushitoninja.jpg
 ダニエルカールさんも絶賛している。
 もちろんダニエルカールさんが絶賛したからといっておもしろいという証拠にはならない。しかし、知らない人、たとえばわたしの彼女の王嘉玲とか、前彼女の李怡祝とか、元彼女の管碧如などが、絶賛したと言っても仕方がない。
 ここはやはり有名人に絶賛してもらわねばならない。

 サウスダコタ州ウォートプラット村のジムが、日本に4週間の観光旅行に来た。
 チャンバラ映画でブシドーを研究したという。日本語は話せないが、わずかに知っている言葉が、
   こんにちは。
   さよなら。
   これいくら。
   どーもありがとう。
   ごめんなさい。
   出あえ出あえくせ者だ。
   刀は武士の魂でござる。
   これお女中、いかがなされた。

 あるいは白目をむいて、
   おめえさんたちゃ何かい……。

 見た映画は
「用心棒」「武士道残酷物語」「座頭市」「喜びも悲しみも幾年月」
 シュワちゃんなどアメリカでは絶対にコマーシャルには出ない高名俳優たちが、日本ではいくらでもテレビに出ていて、それだけでもびっくり。
「日本の料理といえばスシ・テンプラ・スキヤキ・トーフ・トリイだろ」
と、どこまで行ってもどこかおかしい。
 そんなジムが、ハタガヤの小さなマンション「プレジデントハウス」に住む親戚の男の所で寝泊まりして、東京見物を始める。
 二日目は新宿から銀座や皇居へ。
 三日目は浅草に行き、仲見世で刀や忍者の衣装などを買う。その衣装がツーピースか二組かで、話が通じずこじれているとき、着物姿の若い美女に英語で「どうしました」と声をかけられる。
 それがエンで下町情緒を味わえ、スシをはじめ高価な日本料理も食べることができ、着物を堪能することができた。
 ついでにサドーに参加し、脚がしびれてひっくり返る。

 そのお嬢さんはある苦悩を抱えていた。恋人が京都にいたのだ。だが、家族たちは許さない。
 関西旅行に立つとき、そのお嬢さんから密書を預かる。恋文だった。
 男に渡す時の合い言葉は「キンノーかサバクか」「キンノーだ」
 その返事ももらい、奈良観光に行くと、ジムの行動を探る「くの一」にあったりする。
 なんと帰りには密書(返事)をその「くの一」に奪われそうになる。恋路の邪魔をするのはお嬢さんのサドーの先生だった。
 結局、お嬢さんと恋人は駆け落ち(ジムに言わせるとミチユキ)することになる。それをジムが助け、両親に報告する。
 帰りの飛行機では、前のアメリカ人がゲイシャやスシの話をしていて、その内容の酷さが、ジムを苛立たせた。

 まるでよくできた落語だ。
 そう、一つ一つはどこにでもありそうな話。だがそれをうまく組み合わせ、絶妙のタイミングで出す。
 落語では、ある噺を、前座がやってもおもしろくないが、真打ちがやるとおもしろい、ということが多い。
 作者の清水さんは文章の真打ちなんですね。こういう話を得意とする真打ち。
 まだケータイがないころの、楽しい噺です。

 暁玲 「それはどうでもいいけど、謫仙さん、どさくさに紛れて変なこと言いませんでした?」
 我 「ん、なんか言ったか?」
posted by たくせん(謫仙) at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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