上橋菜穂子 角川書店 2019.3

鹿の王と同じで、ちょっと複雑すぎて、カタカナ的な創作名詞が多くて読みにくい。これをクリアできれば、小説としてはおもしろいらしいのだが、わたしはクリアしたとはいえない。
ここでも万葉仮名問題がある。
オタワルの天才医術師ホッサルは、祭司医・真那の招きに応じて、恋人ミラルとともに清心教医術の発祥の地、東乎瑠(ツオル)帝国の一地方、安房那(アワナ)領へと行く。
ここで土毒などの治療方法をめぐって、争いが起こる。三種の治療方法のどれを使うか。
オタワルの医術
清心教医術
清心教医術の古流
この三種は、宗教の禁忌を巡って、相容れない部分がある。
ところがそのうらに次期皇帝争いがあった。有力候補がある薬を使うと、皇帝の資格がなくなる。しかし、それ以外に助ける方法はない。そこから土毒を使った者が推理されるが複雑。そこに次期宮廷祭司医長の争いも絡む。
人の命と医療の在り方を考えさせる。一般論ばかりでなく、目の前の患者をどうするか。それも親しい人である。この問題は現代医療でもあるだろう。
「水底の橋」の意味が気になるが、はっきりした説明はない。