2019年12月18日

白銀の墟 玄の月

十二国記シリーズ  白銀の墟(おか) 玄(くろ)の月
小野不由美   新潮社   2019.11

     19.12.18.1.jpg 
 十二国記シリーズの18年ぶりの長編新作。途中2013年に短編集「丕緒の鳥」がある。
 全4巻で2巻くらいかけて長々と伏線を張るので、なかなか話が進まない。しかもこの間、厳しい戴国(たいこく)の説明が続く。
 驍宗(ぎょうそう)が登極から半年で消息を絶ち、泰麒(たいき)も姿を消した。偽王がたつ。王不在から六年の歳月、人々は極寒と貧しさを凌ぎ生きた。
 白雉(はくち)は落ちていない。つまり王はどこかで生存しているはず。
 片腕の女将軍、李斎は国王(驍宗)を探し続けていた。
 そして、この荒廃した戴国に泰麒が戻ってくる。そして行方不明の王が見つかり、国の復興を目指すまで。これから偽王との戦いだ。
 この間の李斎将軍やその協力者の苦労の物語。暗い話が続き、やっと希望が見えて、本題に入ったなと思うところで終わりである。
 大勢の登場人物も難しい名前で誰が誰だか判らない状態。そして多くの人がほとんど報われない非業の死を遂げる。なんともやりきれない。この世界の舞台設定からそうなるらしい。一気に読みたくなる爽快感や高揚感がない。
 本筋からずれた、枝葉や末節にページを割きすぎていると思う。
 歴史とはそんなものかもしれない。しかし本来このシリーズは、こんな重苦しい話では無かったはず。大変な苦労があるが、それを乗り越えて、こんなによい国になりました、となるファンタジーのはず。

 難しい漢字を使い、無理矢理読ます。これは相変わらず。
「墟」の字の読みも、キョ あと であり、意味は「おか」だから、「おか」という読み方もあるのだろう。
「践祚」と言う言葉が何度も出てくる。「せんそ」とかなを振ったり、「そくい」とかなを振ったりする。「そくい」なら即位でよくないか。だから、践祚だけだと「せんそ」なのか「そくい」なのか判らない。
(ちなみに今上天皇は、践祚と即位を区別せず、2019年5月1日を即位の日とするらしい。10月22日に即位の礼を行っているので、この日が即位の日ではないかと思うが。
 昭和天皇は、践祚が昭和元年12月25日、即位は昭和3年11月10日、と別の日としている)
 これが最終になるらしい。この後短編集を予定しているという。

 なお、シリーズの過去に書いた文を読み返し、訂正もしている。
posted by たくせん(謫仙) at 11:46| Comment(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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