小前 亮 光文社 2019.3
ブラック企業と残業税調査官の頭脳戦といいたいが、今回の中心のテーマは、悪徳法律事務所に勤務する元マルザや、私学の先生、大學の研究者など、一見残業としては首をかしげるような、例外にしたいような職種の残業問題だ。
介護職に就く夏目健人は元フリーター。最悪の労働条件だった会社が大手に買収されて待遇も向上し、ほどほどに満足して働いていたのだが……。残業すればするほど税金が増える「時間外労働税」が導入された社会。介護や教育など、長時間労働の現場で働く人々に起こる様々な事件と、彼らのために奮闘する残業税調査官たちの活躍を描く、話題のお仕事ミステリー第三弾!
従業員を下請化して長時間労働を強いるブラック企業。
大学の研究室で、研究の中心人物が、報告書や残業管理に追われて、研究に没頭できない。優秀な助手に過大な負担を強いる結果となる。
連作短編の形をとっている。だから、主人公は誰か、という問題がここでもある。
わたしは主人公のはっきりした、視点の定まっている話が好きだ。主人公は残業税でも、その視点であればよい。
話ごとに主人公が変わっていると落ち着かない。