2020年03月26日

楽園の真下

楽園の真下
荻原 浩   文藝春秋   2019.9

     20.3.25.1.jpg

 どんな生物も繁栄しようとしている。遺伝子を世界中に広げようと格闘している。
 考えるまでもなく、人類だって増えようと一所懸命だ。食料の安定供給ばかりでなく、病原菌やウイルスなども役に立つのは利用し、害する者は駆除しようとする。生態系を壊してまで、独占しようとする。そしてついには戦争という共食いをしてまで、子孫を増やそうとする。
 この本はそんな生物の姿を象徴するような話である。わたしにはホラーのように思えた。初期のSFにこのような話がなかったか。
 ちょうど今、コロナウイルスの蔓延で、世界中が大騒ぎしている。感染地域の拡大。感染者が爆発的に増え、死者も多い。それが原因で一定地域を封じ込め、あちこちの国で鎖国状態になっている。
 コロナウイルスにとっては、遺伝子の拡大に大成功したといえよう。しかし、このやり方は人類を敵にし、いずれ滅びることになろう。

「日本で一番天国に近い島」と言われた亜熱帯の孤島である志手島。人口は約二千八百人。昔は流人の島であり、今は海洋観光を中心とする島である。
 ここで奇妙な現象が起こっていた。入水自殺者の増加である。そして17pもある巨大なカマキリが見つかった。
 その記事を書こうとして、志手島へ渡ったフリーライター藤間は、島で野生生物を研究している女性准教授の秋村と調査を始めた。

 秋村は生物の不思議な話をする。寄生して宿主の脳まで乗っ取ってしまう例のいくつか。乗っ取られた宿主は、寄生した生物のために、嫌いな水場に近づいて水の中に入って死ぬ例など。
 生物の絶滅を危惧し保護するのも、増えすぎたといって駆除するのも人間のエゴ。

 調査が進むと、驚愕の事実が判明するのだが、単なるフィクションとは思えないリアルな恐ろしさがある。こういうプロットのSFは好みだが、このストーリーは敬遠してしまう。
 人ほどもある巨大なカマキリが登場する。食物の乏しいこの島では、巨大カマキリの餌は少ない。結局共食いで成長することになる。
 ラスト近くで巨大カマキリとの格闘が延々と続く。しかし真の敵は巨大カマキリではなかった。
 結局この島は封鎖され、精密検査を受けて安全が確認された人だけが、島を出ることを許された。
 コロナウイルスの感染者と同じように。
posted by たくせん(謫仙) at 11:05| Comment(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。