2050年、人類史上初めて、世界人口が減少する。
いったん減少に転ずると、二度と増えることはない。
名門調査会社イプソスのグローバルCEOらが、世界各国にてフィールドワークを敢行。統計に加えた貴重な証言をもとに警告する。
国連の予測では今世紀末、地球の人口は110億に膨れ上がるとしているが、多くの人口統計学者が人口を多く見積もりすぎだと指摘している。
国連の人口予測は誤っている。その原因は都市化であり、女性の教育である。そして、結論は2050年に世界人口が90億人近くなり、減少に転ずる。
目次を見よう、この本の言わんとするところが見える。
序章 2050年、人類史上はじめて人口が減少する
1章 人類の歴史を人口で振り返る
2章 人口は爆発しない--マルサスとその後継者たちの誤り
3章 老いゆくヨーロッパ
4章 日本とアジア、少子高齢化への解決策はある
5章 出産の経済学
6章 アフリカの人口爆発は止まる
7章 ブラジル、出生率急減の謎
8章 移民を奪い合う日
9章 象(インド)は台頭し、ドラゴン(中国)は凋落する
10章 アメリカの世界一は、今も昔も移民のおかげだ
11章 少数民族が滅びる日
12章 カナダ、繁栄する“モザイク社会”の秘訣
13章 人口減少した2050年、世界はどうなっているか
30年後には、世界中が今の日本のような少子高齢化社会を迎えることになる。
農村などでは、こどもは労働力の一部であり、育てる負担が小さい。しかも家族や縁者からこどもを要求される。
都市では、こどもは負債であり、生活を圧迫する。しかもこどもを要請されることはほとんどない。宗教的束縛も緩くなる。そして女性の教育が進めば、こどもを産む以外の道を見つけ、少子化となる。一度こうなったら、後戻りはできない。
わたしは紹介していないが「未来の年表」という日本の未来予測の本がある。その国際版みたいな本である。
著者は次のように社会の変化を考えている。
人工置換モデル
第1ステージ 出生率も死亡率も高い
第2ステージ 出生率は高く死亡率は低い
第3ステージ 出生率も死亡率も低い
第4ステージ 出生率は人口置換率に等しく、死亡率は低い
第5ステージ 出生率は人口置換率を下回り、平均寿命は延び続ける
人口置換率とは、人口を維持する、出生率である。社会を維持するには2.0と考えるが、少年時の事故も含めて2.1が最低。
各国各民族を調べて、急速に第5ステージにむかっているという。
若者であふれかえるバンコクが、出生率1.5で人口崩壊途中である。第5ステージだ。
ステージの変化の原因は、都市化と、女性の教育や社会進出である。女性の地位向上である。
日本経済についても、三度の失われた10年で30年停滞しているが、その理由は生産人口の減少と同時に消費人口の減少にある。停滞は当然なのだ。それなのに経済成長をしようと躍起になっている。日本が混乱しないのは、高齢化が始まるまでに豊かになっていたこと。
ブラジルのスラム街の現況は読んでいて驚くほど。それでもテレビドラマの女性像が見本となってこどもの数は減っている。
著者はカナダ人で、カナダが移民受け入れで成功しているのを体感しているので、移民こそが人口減に対する最良の対策であると言うが、それも今のうち。まもなく移民を送り出す国はなくなるだろう。さらに日本は移民先としては魅力がないので、それも難しい。
マルサスの「人口論」やローマクラブの「成長の限界」は、このままでは…という限定の理論だった。出生率の低下を読み間違えたことにある。
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人口減少の流れが止められないのであれば、その現実を素直に受け入れ、人類の知恵で乗り越えたい。
わたしは、たとえば数百年後に世界人口が数億になるころには、人々の意識が変わってくると思うのだが甘いか。日本でいえば、国産の食料で全国民を養える程度の人数になれば、落ち着くと思う。そうなって日本国民の意識が変わることを願う。
それまで、国が保つだろうか。
日本は豊かというのは錯覚ではないか。多くのこどもが貧しさに苦しんでいるように思える。世界最大の借金国家でもある。
たとえば景気がよくなると、株価は上がる。ところが安倍首相は、膨大な金をつぎ込んで、株価だけをつり上げて、景気がよくなったように見せかけている。そのための借金による、予想される未来の生活苦からも出生率の低下を招いているだろう。
気候問題や公害問題や貧富問題も加わっている。これらが解決しないと、人口問題の解決は難しいか。
概ね、わたしなどが普段思っている考えていることを、具体例を示して書いているようだ。