2007年07月24日

宇宙叙事詩(上・下)

   光瀬龍 文   萩尾望都 画    早川書房
 光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」を萩尾望都が劇画化し、そのあとにこの作品が出た。これは二人の幻想的共作である。
 劇画というより絵本というべきであろうか。
 今までの劇画とは異なり、幼児の絵本のように、見開きの画の中に文をいれて、絵物語となっている。
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 この本は1995年発行の文庫版であるが、わたしは文庫になる前の本を見ている。
 もう一度読もうと思ったが、題名を思い出せない。北千住の中央図書館の係りの方に調べていただいた。
 話の内容からどうもこれらしいとなったが、庫内に見あたらない。そこで梅田の図書館に文庫本があることを調べてくれた。
 そして借り出したのが本書である。
 記憶とはかなり異なり、疑問を持ちながら読んでいたが、読み終わって間違いないと判った。記憶とはいかに曖昧なものか。
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     上
  宇宙船乗りの歌が聞こえる
  ルシアナ
  テラリアは遠く
  星と粘土板
  たそがれの楼蘭
  廃墟の旅人
  遠い決別
  ある記録

     下
  惑星アルマナ
  アヨドーヤ物語

 最後のアヨドーヤ物語が中編、それ以外は短編といってよかろう。

 青春の夢を追い求め翡翠座イオへの探検に旅立った夫を追いかけて異国の星に赴いた妻。

 凍土の平原に広がる惑星ルシアナの廃墟で探検隊員の前に夜毎に現れる謎の美少女。

 火星の東キャナル市に惑星探検の宇宙船建造を命じる地球政府。繰り返し、ついに火星の物資は底をつく。それでも作らねばならぬ火星人の苦しみ。その宇宙船が飛び立つ日、愛する男を奪われた女たちの決断は。

 心ない地球人の干渉が引き起こした、異星の悲劇。

 アトランティス王国滅亡の陰に隠されたヴァーラタ国の悲劇的終末。
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 特に「廃墟の旅人」を取りあげよう。

   天山山脈の北に不死の都があるという。
   遠いむかし、
   天から光り物が飛んできて砂漠へ落ちた。
   一人の神人があらわれ、
   近くの町に入った。
   それからその町はしあわせに満ちたという。


 その豊かな町では城門を閉じる必要もなく門の鎖は緑青をふいていた。
 王宮では王女の結婚式が行われていた。
 そこに白馬に乗って入ってきた美しい異国の娘がいた。サテンの帯に黄金の太刀をつり、五弦の月琴を背負っていた。
 式を主催する神官に言う。

……、不死の国があると聞いてやってきた。わたしは阿修羅王だ」
 神官の言葉を制して言う。
「帰って天帝につたえるがよい。生も、死の一つの象(かたち)。死もまた生のひとつの相(すがた)に過ぎない。人の情も夢も、限りある生命なればこそ。その生命が永遠ときそい合って何を得んとはするか」
 悲しみと怒りが広場を閉じた。
「この町を時の流れから切り離し、終わることのないくりかえしの中に封じこめるとは。こは永遠に似て永遠にあらず。ただ色褪せた昨日があるのみではないか」


阿修羅王は黄金の太刀をふりおろす。
一瞬にして城邑は消えた。
さえぎるもののない砂漠に……
白馬に身をゆだねた流離の娘がひとり、闇に消えていった。
posted by たくせん(謫仙) at 07:03| Comment(7) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 評論家の『牢屋壮一』です。SFですか。実は私も『SF』は好きな方です。私の手元にネットオークションで手に入れた『新版SFの世界』と言う出版社の『三省堂』から1976〈昭和51〉年6月に初版が発行された本があります。この本はもしかすると『謫仙さん』も読んだ事があるかもしれませんが、この本の著者はSF評論家でSF作家としても有名だった『福島正実さん』と言う人です。
 内容に関しては謫仙さんもおそらく知っていると思いますが、SF小説などのSF作品ではなく『SFとは何か?』を分かり易く解説したSFの『入門書』です。私は10代の頃に図書館でこの本〈新版SFの世界〉と出会いました。当時の私は自分で本を買う金がありませんでしたので同じ本〈新版SFの世界〉を図書館で何度も何回も繰り返して借りて読みました。私にとってこの本は言わば『SFのバイブル』とも呼べる存在の本です。この本の巻末には『SF事典』と言うSFで使われる用語を解説した『用語集』が付録として掲載されています。
 この本の巻末には『SFベスト100』と称して100冊のSFが取り上げられています。その中には亡くなった故・小松左京の有名な『日本沈没』も含まれています。このブログのこの項目で取り上げられている『光瀬龍』ですが、光瀬龍の作品としては『たそがれに帰る』と言う作品がこの『SFベスト100』の中に含まれています。
 今回は以上です。
Posted by 牢屋壮一〈評論家〉。 at 2013年01月26日 19:30
「新版SFの世界」は知りませんが、福島正実さんはSF界では有名人で、著作もありました。
SF用語はある程度標準化されているので、新しい本を読んでも迷うことは少ないですね。
で、光瀬龍の作品としては「たそがれに帰る」が先だったと思います。これは改訂版もあって、両方読みました。「百億の昼と千億の夜」は好きですが論理的には破綻もあるように思います。
あの当時は日本SFが輝いて見えました。普通新しい試みは助走があって、優れた物が登場します。SFはアメリカで助走を済ませ、完成してから日本に入りました。だから、最初から完成品でした。今でも読み返しに耐えると思います。
金庸小説も別なSFだと思います。こちらもどうぞ、お読み下さい。
Posted by 謫仙 at 2013年01月27日 07:48
 牢屋壮一です。このブログのこの項目の本文に『北千住の中央図書館』と言う語句がありましたので、それについて少し述べたいと思います。
 実は私も『北千住の中央図書館』には良く行きます。謫仙さんも知っての通り足立区の『生涯学習センター』が併設された複合施設でこの足立区の生涯学習センターには『学びピア21』と言う愛称が付けられている事も御存じだと思います。この『学びピア21』の6階には放送大学と言う大学の『東京足立学習センター』がある事も謫仙さんは御存じだと思います。この事は今まで書きませんでしたが、実は私〈牢屋壮一〉はこの放送大学の『卒業生』であり現在も在学しています。
 これから書く事は放送大学の『宣伝』になってしまいますが、少し詳しく放送大学について紹介したいと思います。放送大学と言うのは独立通信制の正規の4年制大学です。学部は『教養学部』だけの単科大学です。放送大学には『2つの顔』があります。正規の4年制大学としての顔と『生涯教育・学習機関』としての顔です。正規の4年制大学ですから卒業すれば『学士〈教養〉』の学位が授与されます。放送大学の学生の種類は『3種類』あります。卒業を目的としたい〈つまり『学士〈教養〉』の学位を得たい〉学生は『全科履修生』と言います。卒業を目的とせずに〈卒業を目的としないで〉好きな科目を選択して履修する学生は『科目履修生』と『選科履修生』と言います。これは『余談』になりますが、放送大学は2009〈平成21〉年度に学生を無視した強権的で一方的な学部の『再編成』が行われました。
 学部の再編成が行われる前の放送大学には『3つのコース』と『6つの専攻』があり、私〈牢屋壮一〉は既に『4つの専攻』を卒業しています。もしかしたら謫仙さんと私〈牢屋壮一〉は北千住の中央図書館や放送大学の『東京足立学習センター』で会った事があるのかもしれません。尤も私の『牢屋壮一』と言う名前は本名ではなくハンドルネームですし、謫仙さんもハンドルネームですから仮に会った事があるとしても見過ごして通り過ぎるだけだと私は思います。機会を見計らってこのブログの適切な項目で私の『牢屋壮一』と言うハンドルネームの『由来』を説明したいと思います〈おそらく想像は付くと思いますが〉。
Posted by 牢屋壮一〈評論家〉。 at 2013年01月27日 17:18
ゴメンナサイ。わたしは図書館は何度か利用しましたが、それ以外のことはなにも知らないンです。
授業料だけで営業できるのか、あるいは放送大学のスポンサーがどこなのか。
なにも知らないので、コメントできません。
スポンサーが赤字になって、援助できなくなったと思いますが、なんとも。
Posted by 謫仙 at 2013年01月28日 09:38
 牢屋壮一です。謫仙さんが疑問に感じた〈思った〉放送大学の『運営〈設置〉母体』ですが、これは『放送大学学園法』と言う法律に基づいて設置された政府が全額を出資する放送大学学園と言う『特別な学校法人』が運営〈設置〉母体です。ですから放送大学のスポンサーは『国』です。以前は放送大学学園は『特殊法人』でしたが、政府の政策である『特殊法人改革』によって法律に基づく特別な学校法人になりました。その『運営費』は学生が納付する入学料と授業料、そして『国庫補助金』です。ですから放送大学と言うのは事実上の『準・国立大学』です。本来ならば放送大学は『完全な国立大学』として設立される予定でしたが、そうすると放送大学の放送は『国営放送』になってしまうので放送法との関係で放送大学の運営〈設置〉母体である『放送大学学園』は当初は特殊法人として設立され、その後の政府の『特殊法人改革』により法律に基づく特別な学校法人になった訳です。
 今回は謫仙さんの疑問に私、牢屋壮一がお答えしました。今回は以上です。
Posted by 牢屋壮一〈評論家〉。 at 2013年02月12日 22:31
そうなると、『準・国立大学』ですね。
近くにも大学があって、東口にも東京電機大学があり、学園都市になりそうな勢い。(^_^)。
ここも知っている人は知っているのでしょうね。

それから失礼ながら、最後の一文、偽者だとは思いませんので安心して下さい。
Posted by 謫仙 at 2013年02月13日 08:46
牢屋壮一さん
ここには大宅壮一は取りあげていません。牢屋壮一の由来は不要です。書かないでください。
Posted by 謫仙 at 2013年02月14日 16:39
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