初めて読んだ武侠小説がこの笑傲江湖である。
全7巻だが、主人公が誰だか判るまでに1巻は終わってしまう。
江湖とは、官に対する民間の意味だが、事実は裏社会にちかい。
「笑傲」とはGoogle翻訳では「非凡な」とでる。「非凡な江湖」という意味らしい。(2023年では「笑顔で誇らしげに」と出た)
その世界の令狐冲と任盈盈の愛の物語といえようか。
ご都合主義は金庸小説の特徴だが、特にこの小説では目立つ。例えば、酒屋に入ると、ちょうどそこで今までの粗筋を語る人がいる。あるいはチョット聞き耳を立てると、ほしい情報が手に入る。
登場する人物の、数々の超能力合戦が見物である。おもしろいことは保証する。
様々な変人奇人が登場するが、東方不敗には吹き出してしまうだろう。この体で無敵の強さを誇るのは不思議である。
福威鏢局(ひょうきょく)に伝わる武林秘伝の「辟邪剣譜」を得ようとして、各派が争う。争いが始まったところで、福威鏢局は青城派に潰される。当主の息子林平之は華山派に入門し、仇の余滄海を討とうとする。
華山派の筆頭弟子である主人公の令狐冲が、福威ひょう局当主の遺言を聞いたため、別人から預かった楽譜「笑傲江湖」を、師などに「辟邪剣譜」と錯覚される。そして判った秘伝は、「自宮」せねば修行できない。それゆえ福威鏢局は「辟邪剣譜を見てはいけない」と伝わり当主も見ていない。その体現者が日月神教の現教主東方不敗である。その後何人かが辟邪剣譜を修行するが、みな非業の死を遂げる。
江湖は大きく分けて
少林派=現在も伝わる少林寺武術の派
武当派=太極拳の開祖 張三豊を祖とする派
五嶽剣派(華山・恒山・泰山・衡山・嵩山)
日月神教・五仙教
その他
と分類され、邪派の日月神教が勢力拡張を図り、正派の五嶽剣派が、個々に対しては敵わないのでひとつにまとまって対抗しようという。
そして五嶽剣派の総帥の座を争うのだが、その中で正義のメッキが徐々に剥がれていく。令狐冲の師匠の君子剣といわれた正義の象徴のような岳不羣が、裏ではあくどいことをしていて、ついに五嶽剣派が事実上滅んでしまう。
残された日月神教(邪派)により江湖が平和になるという話である。
これとて、たまたまこの当主に任盈盈がなったからであり、令狐冲と任盈盈は権力の魔力に引き込まれない人物だったのである。
任盈盈の父任我行は、日月神教の当主に復活すると人格が一変する。
正義とは何か、悪とは何かを問い直される事になる。この話が書かれたのは文化大革命のころで、まるで共産党の幹部争いのようで、話題を呼んだらしい。
ここでは本を紹介するにとどめ、詳しいことは、中国世界−笑傲江湖を見て頂きたい。
妖人東方不敗の妖人を、辞書を引くと「妖術を使う人」とあるが、普通は女形などのイメージらしい。