2007年08月10日

竜宮の乙姫の元結いの切りはずし

   薄井ゆうじ  講談社文庫 1996.10
 この題名を見てなんのことか判る人は、海藻のマニアではないかと思う。
 わたしはなんのことか判らず、この名前で読んで見る気になった。
 前に紹介した「神々のパラドックス」に似て、おとぎ話のイメージを盛り込ませてある。
        ryuguu.jpg
 失業した青年佐久間が、ローカル線の旅をしていた。亀浜駅で、長い時間の停車になる。そこで駅周辺を歩くが、何もない。
 そこでダイバー募集の公告を見て、そこで働くことになる。広告主は太郎という老人。「400年前28歳の時亀を助けて…」という。
 その仕事は、竜宮城探しであった。
 そこで働いている若い女もいて、一緒に海に潜ることになる。
 泊まるところは近くにある24階立てのホテル。客はほとんどいなく、朝食をとるのはいつも二人だけ。これで経営は成り立つのか。
 そこで「お帰り祭」という奇祭があり、ホテルにも客が押し寄せる。
 そのお祭りは、どこの家でも酒や料理を用意して、その家を訪れた見ず知らずの人にお帰りなさいと挨拶してご馳走する。そして双方親しい人のようにふるまうのだ。
 舟の盗難騒ぎなど起こるのだが、盗んだのは太郎と若い女。だが佐久間が二人を見つけると盗んだようではない。
 佐久間がご馳走になった家の老女は、若いとき太郎と結婚したという。
 そんなこんなで、佐久間はすべての事件などに対して、疑問に思ってしまう。本当かな。
「事実を知ったところでなんになるの」
 太郎と女は行方不明になって、佐久間は再び亀浜駅から列車に乗り込む。二度とこの町を思い出したり懐かしんだりすることはないだろうと思いながら。
 本当の自分と巡り会う旅へ。読む人の心を癒し涵養してくれる話だ。ファンタシィと言っていいかもしれない。

 なお、題名の藻は、アマモ科の多年草。葉はリボン状で1メートル以上になる。若芽は甘く食べられる。塩をとったので藻塩草(これなら聞いたことがある)とも。
元結いは「もとゆい」と読みます。江戸言葉では「もっとい」ですが、これは海藻の名なのでもとゆいです。
posted by たくせん(謫仙) at 07:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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