2007年09月15日

緋友禅

  北森鴻    文藝春秋   03.1 
騙しあいと駆け引きの骨董業界を生き抜く美貌の一匹狼、旗師冬狐堂シリーズの中篇集。
 読後感は、米朝の落語を聞いたような、あるいは小松左京の「芸能譚」を読んだような、あるいは安藤鶴夫の寄席もの、あるいはO・ヘンリー。
 厳しさの中にある心の温かさに触れる作品である。
 現実界では、優しさのない厳しさ、厳しさのない優しさが、横行し、後味の悪いことが多い。

 例えば星野監督は選手の三分の一を入れ替えたとか。首になった選手たちはどうなったのか。実力主義の高給社会なので仕方ないのであるが。
 日産の復活の裏にある、大量の首切り。切られた人たちは?。
 この本は、そんな落伍した人たちへの鎮魂の歌である。

 わたしの好きな蘊蓄を傾ける話だが、わたしの知識ではその蘊蓄が、本当なのか、作者の作り話なのか判断できない。
 円空仏は十二万体作られたという、そしてその特徴は光線に対する相性があることだ。ある一定の方向から光を当てた場合だけ、円空仏の表情が現れる。
 あるいは萩焼の土の産地と土の扱い方。貫入というひびによる萩焼の七変化。
 あるいは楊枝糊置きで細い線を出す表題作。
 こんな、わたしのような素人には判断できないことが次々と出てくる。それがこのシリーズの魅力なのだ。そもそも「旗師」という名称さえ、本当か著者の創作かわたしには判別できない。
posted by たくせん(謫仙) at 11:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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