2007年09月18日

瑠璃の契り

   北森鴻   文藝春秋    05.1.15
 旗師・冬狐堂シリーズの第4作目にあたるか。
 「狐罠」「狐闇」「緋友禅」では贋作や骨董の蘊蓄を読ませてくれたが、今回は骨董にからむミステリーに重点が移っている。
          rulinochigiri.jpg
 ミステリーファンにはいいかもしれないが、わたしはミステリーのファンではない。
 もっともミステリーファンには蘊蓄を嫌う人がいる。
「能書きなんか読みたくない」と。
 わたしは骨董のミステリーはかまわないが、骨董にからむミステリーは御免被りたい。
 特に嫌いなのが、「名探偵みなを集めてさてと言い」だ。あとからこんなことがあったあんなことがあったと、後出しじゃんけんのように言うことだ。
 事件が起こったときにそれを言うと、そこで「終わり」になって原稿料を稼げないか。
 一人称小説や一人称と同じ視点の小説は主人公の疑問や気づいたことは読者にも知らせるべき。秘密にしていることが些細なことでもわたしはいらいらする。この本にはその兆候が見える。さて、今回は4編の中編小説からなる。

 冬狐堂つまり陶子は目を患ってしまった。飛蚊症、眼球の硝子体に濁りが生じた。文字通り目端の利くことが旗師の絶対条件であるのにその武器に濁りが生じる。
 そのことが同業者にもれて、それを試すかのような仕事が持ち込まれる。写真家の親友硝子と協力してその謎を解く。

倣雛心中(ならいびなしんじゅう)
何度も返品される人形の謎。普通手袋をして触る。目で見ても判らないが、直接指で触ると違和感がある。
苦い狐
 陶子の美術大学生時代の挫折と卒業前に亡くなった女子の学友。その追悼集が再版された。そのはずはないと、立ち上がる。
瑠璃の契り
 奇蹟的にみごとなガラス碗。それが一つではなかった。硝子の修業時代の秘密も絡まる、すでに亡きガラス細工の職人の謎。
黒髪のクピト
 元夫Dの謎の行動を追う陶子は、それが仕組まれたことを知る。そのわけは過去の恐るべき事件の抹殺。

 それぞれに骨董の蘊蓄はあるのだが、それを利用するミステリー小説になっている。
 特に黒髪のクピトなど、なぜこんな手の込んだことをするのかそれが謎だ。もちろん謎は解明され、その理由も明らかになるのだが、振り返って最初に戻って考えてみると、犯人はそんな面倒なことをする理由がないに等しい。もっと簡単で確実な方法がありそう。
posted by たくせん(謫仙) at 07:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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