2007年11月12日

臨安水滸伝

    井上祐美子   講談社   02.9
 南宋の初め高宗時代の臨安(杭州)。
 岳飛が獄死してからすでに8年。
 いま南宋には全面戦争をする能力も財力もなかった。開戦すなわち国家の滅亡である。
 金との和平は秦檜の存在によって保たれていた。
 その臨安で水運業を営む夏家の若い二人、当主の資生と本来当主になるべきだった風生。
 そこへ北から辛酸をなめながら秦檜殺害を目的に臨安に来た男がいた。
 その男に殺害をやめさせようとして、秦檜派だと思われてしまう。
 そんなとき、宦官の張太監から、極秘に依頼があった。
「…没収された財産は五万もの兵を養っていくほどではないと思われる…」
 岳家軍の残党が隠した財産があると、取りざたされている、密かに真偽を確かめてもらいたい、という。
 もし残党に接触すれば、それを持って謀反の疑いをかけられてしまう。
 しかし、張太監の依頼が財産ほしさが見え見えでも、断る訳にもいかず。
 当の風生こそ、岳家軍の残党の頭領であり、財産の管理人であった。

 あの秦檜と高宗にとって、岳飛のような、私兵を養い国策に背いて戦争を主張する者は困りものであった。せっかくの和平も崩れかねない。
 開戦すなわち国家の滅亡であることを知っている風生は、秦檜殺害を防ごうとする。
 秦檜とて、独断でやっているわけではない。帝の暗黙の命を受け、法に許される範囲内でしか行動できない最高権力者であった。
 秦檜の存在感が大きく、従来の悪役とはひと味もふた味も違った秦檜に同感してしまう。全体的に猫の使い方が面白い。

 秦檜殺害をたくらむ男に女の子がいた。この子が凛としていて清涼感がある。
posted by たくせん(謫仙) at 08:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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