2007年11月27日

ラインの虜囚

    田中芳樹   講談社   05.7
 この本は史仙さんの推薦によります。下の文はその推薦文です。
  
        rainnoryoshuu.jpg
 一八三〇年、冬、カナダから祖父を訪ねてパリまできたコリンヌに、与えられたのは一つの依頼。ライン河の古城に幽閉されている人物を確かめること。酔いどれ剣士モントラシェ、カリブの海賊王ラフィット、若き自称天才作家アレク、そして少女コリンヌの四人がむかった古城への旅。奇怪な塔に幽閉された仮面の男は死んだはずのナポレオンなのか?謎と冒険の旅がいまはじまった!
 著書の別作品「アップフェルラント物語」の中で、とある登場人物がこんなことを云っています。「元気な男の子と健気な女の子がいれば、国は滅びない」と。
 田中芳樹さんのポリシーであり、またジュヴィナイル小説の王道とでもいうフレーズだろうとおもうのです。
 それにかててくわえて、田中さんの小説に共通するキャラとして、少年少女を的確にサポートする大人たちの存在を見逃すわけにはいきません。
 大活躍する少年少女。そして彼らを見守り、支える大人たち。
 フェレンツ・モルナールの「パール街の少年たち」がそうだし、「エミールと探偵たち」「飛ぶ教室」を初めとするケストナーの小説群も同じ構成です。

 「ラインの虜囚」の場合、それは酔いどれ剣士であり、海賊王、そして自称天才作家らがそれに当たります。彼らはそれぞれに「こんな大人になりたいものだ!」そう思わせる魅力ある存在です。僕自身は「天才作家」以外知識がなかったのだが、彼らは歴史上の人物でもあるらしいのですが。
 本作品を読了後、彼らの実像を知りたくなって、いろいろ自分で調べてみるのも一興かもしれません。

 その装丁も、なかなか良いです。
 そのカバーの「窓」よりヒロインの貌がのぞいている仕上げ!
が、唯一の難点は値段がすこし高価なことでしょう。
 2100円って、定職をもった大人ならともかく、中高生ら子供らが気軽に購入できる金額でないかもしれません。
 だからといって、図書館で読めっていうのもねぇ・・・作者の財政状況になんら寄与する行為ではない。図書館が本を殺す、というのはある意味真実をついたコトバです。


 どうです(^_^)。読みたくなってきませんか。
 本文については下手に追加しないことする。あとがきに著者は次のように書いている。
 好きだった本を並べて、(海底二万里・地底旅行・三銃士など)

 これらの物語には、じつは三つの共通点がある。
一、舞台が外国であること
二、時代が現在とべつな時代であること
三、子どもが登場しないこと
   ……
 私は子どものころ、自分の知っている世界を自分の知っている言葉だけで書かれた物語に、何の興味も持てなかった。


 物語の世界に国境はないという著者の気持ちがわかるではないか。
 私もこれに似た傾向がある。子供が登場するのは抵抗はないが、大人の観賞に堪えること。舞台は日本でもいいが、知らない世界であること。
 昔話も漱石も時代小説も若いときはこの条件に近い。日本を知ってくると、歴史小説は外国ではなくなってきた。そして興味の中心はSFになった。だがそのSFが観念的になって物語ではなくなったころ、中国歴史小説が中心となってきた。
 今では、日本の歴史小説も、再認識しなければならない、知らない世界である。
 この本の主人公はカナダの女の子だが、実在の人物で、後にアメリカの奴隷解放に大きな役割を果たしたという。
posted by たくせん(謫仙) at 07:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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