2007年12月02日

桃夭記

   井上祐美子   講談社文庫  2000.3
 珠玉の中編集。井上祐美子さんの象徴のような作品である。

桃夭記
 樹齢三百年という桃の木のある屋敷の話。
 怪しげな道士に騙されそうな群王とその娘をを救おうとする青年。それを助ける食客。
 怪異を鎮め、隠された計略からも助けるが、娘は死に、群王は引退する。
 青年はその後科挙に合格し、十年後任地から都に戻るとき、あの食客に会う。そして娘が一緒にいるではないか。十年前のそのままの姿で。そして食客は消えてしまう。

古詩に歌う。
  桃の夭夭たる
  灼灼たるその華
  この子ここに帰(とつ)かば
  その室家に宜(よろ)しからん


嘯風録
 科挙をうけて状元となった青年が、少年皇帝のために、政府の改革を目指す。
 あまたの抵抗をうけ、願い敵わず虎に変じて去る。
 虎の故郷の村は、虎のために平和になり、村人に感謝されているという。
 成長した少年皇帝は、もはや人形ではなく、周りの自由にならないため殺され、新たに少年の皇帝がたつ。

迷宮譚
 南宋の都となったこともある杭州、ここに広大な屋敷があった。
 その主の商人が死に、商売敵ともいえる交際のあった日本人が、その屋敷を訪ねる。そこでその屋敷の怪異にとりつかれる。何度も夢から目覚めることになり、その悪夢から逃れようと、夢のもとになる甕を壊したが、その屋敷を管理する青年に射殺されてしまう。
しかし、
 「――先生、起きてください、朝ですよ」

墨匠伝
 硯や墨にもピンからキリまである。だがいくら優れた墨でも、持っているだけでは役に立たず、使ってこそ価値がある。この墨を作る師と弟子の愛憎の話であるが、師の娘のうちに秘めたる強さが清涼剤である。
弟子が襲われ、父に犯人の疑いがかかったとき、
「父にはできません」
「父はああ見えて、小心者で―」
と、鈍いようで、しっかりと父を見ている。
 最後に家宝ともいえる墨『九錫玄香』を、価値が判っていて、普通の墨の如く静かに磨る姿は神々しいほど。
posted by たくせん(謫仙) at 12:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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