金庸の世界で、只一人、わたしが共感できない主人公が、この陳家洛である。
むしろヒロインの姉で、回族を率いるホチントン(霍青桐)の方がヒーローとしてふさわしい。
常に冷静で、男に媚びない態度は、リーダーとして陳家洛より優れている。
ヒロインのカスリー(香香公主)は、せりふをそのまま訳すと、肉体年齢18歳、精神年齢8歳になってしまうそうだ。
名前から判るように、乾隆帝を拒否した香妃の伝説を踏まえている。
また乾隆帝は実は漢民族であったという、民間伝説がある。これがこの物語の鍵になる。
陳家洛は江湖の人ではなく、官界に属すような人だった。つまり文人である。
教養人であるが、人格的には欠点が多い。惚れきった恋人を敵に差し出すような人だ。中国の文人には普通の考え方らしい。しかも事は成就しない。
このような人物を主人公にしたのは初めてで、評判になったという。
なお、これが金庸の武侠小説の処女作である。
参考 書剣恩仇録のあらすじ