2007年12月31日

隼人

   郷隼人   幻冬舎  04.4
 郷隼人の名を知っているだろうか。
 わたしはあるとき短歌に興味を持った。正式に習ったわけではない。まず俵万智の歌を擬製した。まねである。
 そして、自作するようになると、朝日歌壇を見るようになった。そこの常連に郷隼人の名があったのである。

        hayato.jpg
 アメリカの刑務所に入っている事は判っていたが、詳しいことは知らなかった。04年にこの歌集を発行した。これを読んである程度のことが判った。
 殺人による終身刑で85年から入所、すでに20年以上たつ。何歳であろうか。
 その歌は父母を思い、娘を思い、日本を懐かしむ。その歌のファンは多い。

一瞬に人を殺めし罪の手と
      うた詠むペンを持つ手は同じ

母さんに「直ぐ帰るから待ってて」と
      告げて渡米し三十年経ちぬ


 ペンネームから察することができるように鹿児島の出身である。このように歌を作り、絵も描ける、繊細な神経の持ち主が、いかなる経緯で殺人に及んだのか。

十年の歳月を経て初めての
      母の便りに胸がつまりぬ


 横文字を知らない母が、住所など真似をして書いたという。あとは著者が何枚も書いて送り、母はそれを封筒に貼り付けて手紙とした。
獄に読む老母の文こそ哀しけれ父の介護に疲れ果てしと」読んで涙を流したことだろう。

娑婆にては少数民族(マイノリティ)の黒人が
      大多数民族(マジョリティ)となるアメリカン刑務所(プリズン)

 どこのプリズンに行っても、約三千名の収容者の中にはチャイニーズ、フィリピーノ、ベトナミーズ、カンボシアン等々を筆頭にアジア人が二、三十名必ずいた。それにほんの少数のコリアン、中近東の者も。しかし日本国籍のジャパニーズは1人もいなかった。


 刑務所内では、著者は絶対的な少数民族となる。
 歌ばかりでなく、歌の説明や刑務所の様子や暮らしぶりなど、プロ並みのイラストつきで細かく書いている。
 グッピーを密かに飼っている話は驚く。看守も見ぬふりをするのだが、あるとき、泳いでいるグッピーを看守が取りあげてトイレに流してしまった。その寂しさ。
 犯罪者が多くなり、一部屋三畳ほどの独居房に二人ずつ入っているという。白人なら白人同士、東洋人なら東洋人同士でペアになる事が多い。全く気の合わない相手だと、大変な苦痛になる。

美化してはならぬ吾が身の現状を
       戒めながら作歌に励む


 わたし(謫仙)は死刑は廃止すべきだと思うが、今の日本にはその代わりとなるものがない。殺人でも最長が十五年。無期懲役というのもあるが例外。そのはずなのに、模範囚は六年とか七年で出てくることがある。死刑との差は大きい。
「ここで死刑にしてしまわないと、五六年で出てきてしまう」という気持ちが、死刑の存続を望むのではなかろうか。
 とりあえずは保釈なしの終身刑を設けて、死刑の代わりとすることができないか。
 アメリカの刑務所では、一時保釈なしの終身刑で、刑務所に五十年六十年住んでいる人がいる。おそらく筆者もそうなるだろう。それなら被害者の遺族も納得するのではないか。

08.6.22追記
 無期懲役の場合、五六年で出てくることはなく、模範囚でも20年とか30年とかかかるという。30年は絶対に保釈しないということなら無期で代用できそうだ。しかし、そのことを周知させねばならない。
 現在、鳩山法相が死刑への署名が多いと話題になっている。これは法務大臣としての責務であり、責めるべきではないだろう。死刑制度を議論し結論を出して、やめさせるべきこと。
posted by たくせん(謫仙) at 06:34| Comment(0) | TrackBack(1) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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