2008年02月05日

鹿鼎記 八 栄光の彼方

  金庸  訳 岡崎由美・小島瑞紀  徳間書店   04.3
 小説の主人公が善人であるとは限らない。この小説では、いい加減なお調子者の韋小宝は、目標に向かって努力する気もなければ、大きな計画を立てるわけでもない。市井の一小人が、運だけで康煕帝の高官になって、栄華を極める。
 この韋小宝にもひとつだけ取り柄があった。義侠心である。
 皇帝を裏切って、島流しのような状態となる。復帰してからは、天地会を滅ぼせと要求されるが、たとえ地位を棒に振ってもできないと断る。天地会では皇帝の暗殺を迫られるが、これも受け入れない。
 結局、高官の地位も青木堂の香主の地位も捨てて、雲南の大理に雲隠れしすることになった。
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 さて、今回は。
 神龍教に捕まった韋小宝たちは神龍島に連れて行かれる。陳阿珂や方怡なども一緒だ。
 そこは無人となっていた。一緒に行った主な信徒が一斉に教主に背く。しかし殺されてしまう。韋小宝は夫人らと協力して、教主を倒す。
 そして、隣の通吃島へ行く。ここに天地会の総舵手陳近南たちと清軍とが争いながら、上陸してきた。
 そこで陳近南は鄭成功の孫「鄭克ソウ」に殺される。そのあと、風際中によって、同行してきた天地会の仲間が殺されてしまう。ここでようやく天地会の裏切り者が判る。なんとか風際中は始末したが、韋小宝と七人の女(妻)は島に取り残されてしまう。そのうちの一人は(建前は)皇帝の妹である。
 この後、皇帝の捜索隊に見つかるが、天地会殲滅を条件に帰ってよいといわれ、断ってしまう。そして通吃伯爵とされ、毎年12月には皇帝からの贈り物が届き……、いったい何年この島にいたのだろうか。呉三桂の乱が片づいてしまった。
 本来、天地会などの反清勢力の総帥となるべき鄭克ソウは、清に寝返り、名前だけとはいえ高官となった。
 韋小宝はその後、皇帝の命によりその島から出られなくなる。
 施琅を騙し、台湾の提督代理となり、北京に復帰できた。記述はないがこの時はおそらく、康煕帝二十九歳、韋小宝二十七歳であろう。
 北京に復帰してからは、ロシアの侵略を防ぎ、手柄を立てる。さらに鄭成功の孫を徹底的にいびる。
 皇帝が陳近南を殺したのは韋小宝だとふれたため、韋小宝は天地会の人たちに誤解されたりするが、何とか危機を脱し、母親を伴い大理に雲隠れする。
 雲南に同行した女たちは、双児・曾柔・建寧公主・沐剣屏・方怡・陳阿珂・蘇センの七人。それに子どもが三人いた。
     …………………………
 金庸の最初の小説が書剣恩仇録。あれは読書人(陳家洛)が理想をふり回し、恋人を理想のための犠牲にし、結局は何もできなかった話。この小説はその逆をいっている。文字も読めない理想もない一小人(韋小宝)が、栄華を手に入れ、七人もの妻を得、義侠心だけでうまく世渡りしている。小説は道徳の教科書ではないのだ。

   参考  たくせんの中国世界−鹿鼎記
posted by たくせん(謫仙) at 07:19| Comment(2) | TrackBack(0) | 書庫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
金庸の「鹿鼎記」は、大長編なのですね。
少年から青年へとお調子者の話で8巻というのは、謫仙さんの書いてあるとおり、
矛盾といい加減さに満ちているようですね。
でも、その中で、一つの生き方を通じての作者の考えがありそうですね。
英雄だけが偉いのではないといっているようにも見えます。
それまでの、作品とスタイルを変えて、筆を折る・・・
全部、通して読むと、何かが見えてきそうですね。
この本を読む気もなく、謫仙さんの文章だけで勝手なことを書いてしまいました。
Posted by オコジョ at 2008年02月07日 20:18
オコジョさん。
金庸は様々な人を登場させていますが、同じような人は登場させない。書きたいすべての人を書いたので終わりにした。と言っています。
特徴は老人が枯れないことと、女の子が元気なことでしょうか(^。^))。
それから歴史的事実をかなり取り入れている。そのためストーリーに制約があります。
長平公主(九難)は、実際は、明朝崩壊の2年後くらいに亡くなっています。片腕は傷ついて利かなくなっていましたが、落ちてはいませんでした。
そんなふうに細かいところは少し変更していますね。

それはともかく、人にはいろいろな生き方がある、ひとつの枠に当てはめてはいけない。というのがメインのような気がします。
Posted by 謫仙 at 2008年02月08日 08:10
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