松岡圭祐 小学館 04.4.1
相変わらず、千里眼岬美由紀のスーパーマン(?)ぶりが目立つ。
税収不足に悩む政府や都知事が、お台場に巨大なカジノを密かに作っている。カジノができあがってから、カジノを許可する法律を作ろうとするのだが、その途中で試験的に公開する。
このときお台場に持ち込まれた400億円の現金を、警察幹部がやくざを利用して、手に入れようとする。
岬美由紀やマジシャン里見沙希などが協力して、400億円を守り、カジノを断念させる。
税収が足りないのを、てっとりばやく博打のテラ銭で補おうとする安易な考えは、つぶれて当然だが、表面的には観光開発が名目となってもっともらしい。
この本のハードカバーが出たとき、ちょうど石原都知事のお台場カジノ計画が発表され話題となった。
こちらの方は岬美由紀によらず、世間の常識が断念させたが、その後の経過をふまえて、文庫化するときに手を加えた。
ある人がハードカバーを読んで、このシリーズは「とんでも本」化してきたと評していたが、そのあたりも書き改めたかもしれない。わたしはハードカバーを読んでいない。
話はおもしろいのであるが、読んでいていらいらする。
話の中心が分散していて、特に都知事の息子である大臣が、計画推進に努力するのに騙されてしまう話が大きく、主人公たちの活躍が脇筋に近くなっているいるせいか。
刑事コロンボというテレビ番組があった。最初の犯行のシーンが4分の1、それを解くコロンボの話が4分の3程度だったか。
この本ではそれが逆転している。そのため表紙の題名につられて買った身にとっては、かなり不満の多い内容なのだ。
同じことでも、主人公たちの目を通して次々に判ってくるという形にすれば……、と思うのだがどうだろう。
400億円強奪を計画する警察トップは元神奈川県警トップという設定は、生々しすぎて笑うに笑えなかった。
最近も倒産寸前の石原銀行(正式な名前はなんだっけ)に、偶然にも400億円追加出資する話が決まった。その決定の経緯がどうも不自然。ただ議会の決定を得ているので合法です。